あっち飛び こっち飛び
『あっち飛び こっち飛び』(川原健次著)
散歩つらつら
歩いていると、ずうっと悩んでいたことに
ポンと答えが見つかることがある。
机に座り部屋に閉じこもって
何日考えても見つからなかった答えが、
ちょっと体を動かしただけで、
いとも簡単にみつかる。
外気か、景色か、
はたまた人の顔か、町の動きか…
と考えてみる。
空がある。町がある。
色があって、音もある。
火力発電所の煙がたなびいて
先端からゆっくり空に溶け込んでいく。
異郷にも60年過ぎた。
恩人・知人、同輩の多くが
あちら(彼岸)に逝ってしまった。
これだけは駄々をこねるという訳にもゆくまい。
分かっていることだ。
年をとって、恨みも、悔しさも、
時の経過で薄れていることに気づく。
犯した罪(裁かれる程ではないけれど)も、
間違いも、黙って許しを請うしかない。
あの煙のように。
肉体の元気は宝、
二、三日、奔放の旅に出るか。