あっち飛びこっち飛び③
あっち飛びこっち飛び(川原健次著)
名場面
小学校の同級生に、
六年間一番背が低く(ちなみに自分も低い同類項)、
明るく奇抜な、
元気印のK君、
通称「まめ金」というあだ名の友がいた。
先生が「知っている山脈の名は?」と言うと
「はい」と手を挙げ、
指名されると、
「青い山脈」と即答し、
「それは映画の名前だろう」と先生に叱られた。
皆は電信柱の映画ポスターを思い出して大笑い。
また、ある時、
「俳句は五七五の言葉で…出来たかな?」と先生が言うと、
まめ金、指を折りつつ、
「あいうえお いろはにほへと かきくけこ」とやった。
先生の顔が面白かった。
古希を過ぎて、
東京のクラス会もこれっきりとなった日、
誰かが「まめ金」を懐かしみ、
この場面を披露した。
これにはびっくり。
故郷での時計屋を閉めて悠々自適と思うが、
この頃、K君に無性に会いたい。